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ヘヴン 斜視の少年とイジメ

川上未映子さんのヘヴンを読んでみました。当時この本をもさ読もうとしたきっかけは確か、何かのサイトでこの本の紹介に、生きる意味について向き合う少年と少女、とかなんとか書いてあるのに惹かれたんですね。現在進行形で生きる意味を考えている僕としては、こう書いてあったら買ってしまうだろうなとは思います。

 

そして読んでいくのですが、この作品、ものすっごいイジメ描写が生々しいんですよ、描写っていうかあのいじめられたことのある人にしかわからないあの心の中がきゅうって掴まれたような感じ、他の人からの視線を全て自分が受けているかのような気持ち悪さ、周りに誰も頼れる人がいなく、いじめてくる奴らが近くに来ただけで冷や汗が出て色々されることを想像してしまう。とにかく読んでいてとても精神的にきます。あの感覚は本当に一生味わいたくないと思う。

逆にですよ、ただ読んでいるだけで、これだけ精神にダメージを与えるような描写をこの作者は書けるんですよ。

最初読み始めた時はいじめのシーンの途中で疲れ果てて読むのをやめようかと思いました。本当にそれくらい登場人物に自分を投射してしまうんです。これって作家としては素晴らしい能力だと思います。普通に考えたら売れっ子作家なので技術があるのは当たり前なんですが、それでも久しぶりに本の中の人と自分があれほどリンクした経験をしたのでとても印象に残っています。

もう1つ、イジメグループの1人、いつもクールでイジメリーダーにも一目置かれ、何か冷めきっている男、百生のイジメ理論。イジメ理論という名前は勝手に決めました。この理論、初めて百生の話を読んだ時、不覚にも少し考えて納得してしまったんです。この理論は是非読んでみて欲しい。色々考えはあるとは思いますが、読み終えて少し経ってからまたその部分を読み返したら、やっぱり百生、それはただの戯言だよ、本質も何も百瀬が言っていることは自己中心的な考え、エゴに凝り固まった自分を守るための言い訳にしか聞こえませんでした。

この部分は一番の見せ所だと思うので深くは書きません、是非読んでみて欲しい。川上未映子さんの作品は序盤で躓かなければ中後半から怒涛のスピードで読めます、それぐらい一気にのめり込めます。

あと最後にこの作品、是非イジメを受けている、もしくはイジメている子供の思保護者の方に読んで欲しい。イジメって本当に受けた子にとっては辛い経験でしかなく、生涯あの記憶は消えません、助けを求める事が難しい、なのでもしこの小説を読んで少しでも子供の辛さ、苦しさを身をもって感じて欲しい、そうすればきっと今まで以上に自分の子供の助けになれる振る舞いができると思います。

どうかこの小説を少しでも多くの人が読んで少しでもいいからイジメについて考えて欲しい。